ポジティブな行動支援(倉敷モデル)の実践には,解決志向アプローチの視点が盛り込まれています。解決志向アプローチには,様々な質問がありますが,「成功の責任追及」は,相手の自尊感情や意欲を高める効果が期待できます。さらに,「失敗の責任追及」はやりすぎると生徒の自尊感情を損ねてしまいますが,「成功の責任追及」は,やればやるほど信頼関係を深めます。
「1 生徒から教えられた人を勇気づけ励ます心」では,「あなたは,いつも大きくうなずきながらピッチャーにボールを返していますね。あれには,どういう意味があるのですか。」と「成功の責任追及」をしています。
その結果,私は生徒の答えから教育について深く考える意義深い話を聞くことになりました。生徒に教えてもらうという姿勢は,大切にしたい解決志向アプローチの姿勢です。これを,「ワン・ダウン」ということがあります。
また,「成功の責任追及」をすると,周りの身近な人々への感謝の言葉を聞くことが多くあります。オリンピックのインタビューにおいても,入賞の理由に「家族,コーチ,仲間,応援してくれる人々」への感謝の言葉を聞くことが多いです。選手は,感謝の言葉を述べることによって一段と強くたくましく成長しているように見えました。「成功の責任追及」が感謝の言葉を引き出し,一層,その人を成長させる力があると思います。
「2 クラスの合唱が伸びたきっかけ」は,ほめることが,その場で終わらず,伝染することを感じた出来事でした。行き詰った状況のなかで,ちょっとしたほめ言葉が生徒を勇気づけ変化を生み,変化は変化を増幅して,周りへ波及していく。解決志向アプローチでは,挨拶や返事,うなずきや笑顔など,ちょっとした承認の反応を,コンプリメントと言います。コンプリメントはコンプリメントを生み,広がり,周りへ波及していく。そういうちょっとしたコンプリメントを大切にしたいと思います。